卒業後はクリエイターになりたい。
何かをいちからつくりたい。
小谷光輝 外国語学部 第2部英米学科 2015年度入学/2021年度卒業
外大への入学に、大きな志はなかった。
なぜ外大を選んだか?そうですね。正直に言っちゃうと、高校の模試判定で決めました。何かをやってやろうという強い気持ちというか、志はありませんでした。でも、学費が魅力で第2部に入りたかったので、そこにはこだわりました。
オープンキャンパスには行かず、大学のこともあまり知りませんでした。そのぶんというとオカシイかもしれませんが、期待がなかったぶん、入学して感じた印象は新鮮でした。
入学後はいろいろマジメにやりました。
高校では、1日3時間の勉強をノルマに課せられるような、けっこうヘビーな寮生活を送っていました。人づきあいでは中立的な立場をとるタイプの人間でしたから、友だちは多かったと思います。先生のモノマネが得意で、その特技のおかげでまわりからチヤホヤされていました。
大学では、第2部軽音楽部とフォークソング部に入りました。部活も授業もバイトも、何に対してもマジメにやっていました。それでかな?1年の後半に疲れてきちゃって、少し休みたくなってきたんです。何かやりたいことがあって休学したいのではなくて、休息のために休む、休学したいってカンジでした。ひと言でいうと“ほぼ引きこもり”です。何もしたくない状態です。でも、それはジャンプの前にしゃがんで飛ぶためのチカラを蓄えているのと同じことで、その後ウワーッと動きたくなってくるんです。
休学中に観た映画に感動。
休学中に映画「007」を観て感銘を受けて、映画をつくる側のひとになりたいと本気で思いました。でも、このままではいけない。何か行動をしなきゃと思い上京を考えるようになったんです。
休学中は、上京して俳優の養成学校に通う。
さらに上京への思いが強くなり、休学期間を利用して、1年ほど東京へ行くことに決めました。東京という土地への憧れから上京を考えたのではなくて、根底にやりたいことがあったんです。それが、自主映画の制作でした。演技やストーリーづくりなどを勉強したくて、東京の俳優養成学校に通うことにしたんです。そこで友人を集めて、じぶんたちで自主映画の制作をはじめたりしました。ピアノが特技なので、芸術家ならではというか精神的な危うさをストーリーにして、幻が見えるようなシーンを心理描写として描こうと考えたりしていました。
学校は思っていた方向と違い、歌、ダンス、ミュージカルや舞台などにチカラを注いでいたんです。じぶんは“つくる側の人間”になりたかったので、ちょっと違うカンジでした。
学校に通いながらバイトに明け暮れました。その結果、バイトの疲れとバイト先の飲み会が重なって、体調を崩してしまいました。このまま東京にいるより、神戸に帰ろうと決意しました。
神戸に帰り、ピアノ系YouTuberとしての活動を開始しました。
精神的なダメージがあってじぶんが弱気になったときは、行動を変えてみることを心がけていました。事実、それでモノゴトが好転していたんです。
神戸に帰ってきて、何かいままでと違うことがしたいと思い、ピアノの演奏動画を投稿するようになりました。SNSという発信媒体が当たり前のようになっていたことから、そこを活用すれば、じぶんを表現するアウトプットの場にできるだろうと考えました。休学して東京へ行って、また神戸に帰ってきて。こんどは自主映画からピアノ系YouTuberへと行動を変えてみたんです。街角に置かれているストリートピアノを演奏し、その動画を投稿したら、想像以上にバズったんですよ。そして、どんどん反応が爆発していきました。閲覧数が上がると、もっと数字を上げたくなるんですよ。良い意味でも悪い意味でも、バズることばかり考えてしまうんです。
ただ、そのとき決めていたのは、ジャンルを決めないということでした。広く浅くでいこう、ジャンルを絞らないでいこう。まだじぶんを固めるときじゃない。あれもこれも弾きたい。器用なじぶんで良いじゃないか。その方が、じぶんのあり方をいろんな方向から考えられると思ったんです。だから、演奏するジャンルはジブリやJ-POPなど、じつに幅広いです。そうやって、YouTube動画というジャンルで、じぶんの考えで作品を作っていくことはかなり自由度が高くて面白いです。自由度や自己表現ということは、大学で学んでいるだけでは気づけなかったと思います。
視野が大きく広がった。
コロナで演奏する場所がなくなり、もの凄くショックでした。不安でもありました。でも、考えてみたらピアノ系YouTuberの活動を通して、いろんなひととの出会いがありました。じぶんの視野が大きく広がったと思います。今後つくりたいものを見据えながら、活動や生活を変えていきました。
いまは実家のある岡山にいます。時間やお金にはゆとりがある生活です。交通の便は悪いけど、デメリットは感じません。悩むことも多かったけど、けっきょく答えなんて出ないんだからと、割り切れるようになりました。じぶんがやりたくてやっていることにこころを動かしてくれるひとがいるおかげで表現活動ができているんだ、と思うようになりました。
体調を崩すことも多かったので、いまこうやってやりたいことができていることを、ありがたいことだと思っています。いまは自然に何ごとにも感謝できるようになりました。
セルフプロデュースというキーワード。
時間の経過とともに、以前こころに留めていた「セルフプロデュース」という言葉というか概念を思い出しました。YouTubeのコメントを見ていると、じぶんが自身に抱いているイメージと、視聴者が感じているじぶんとにギャップがあることに気づきました。しかし、視聴者の方もいろんな層の人がいるし、そのときどきの状況によって受け取り方も変わると思います。じぶんは他人にどう見えるか、じぶんはどう見せたいかということに悩んでいましたが、いまは「見え方は人それぞれ違うんだから悩むことではないかもしれない」と思っています。
卒業までにじぶんの曲をつくりたい。
いまはバズりたいとか、有名になりたいとか。そんな気持ちはありません。ただ、ただ、つくりたい。それだけです。YouTuberをはじめた動機はアウトプットすることでじぶんの表現を備忘録的に残したいという小さな気持ちだったけど、それが少し膨らみ野望と言うほどではありませんが、卒業までにじぶんの曲をつくりたいと思っています。
卒業後はクリエイターになりたいと思っています。何かをいちからつくるような人間になりたいです。絵が小さいころから得意だったので、絵と音楽をセットにするとか、じぶんの持つスキルをすべて投入したいという考えを持っています。
無理をしないで、いまじぶんにできることを考えてください。
そうですね。じぶんの体験から後輩たちに言えるのは、無理をしないで、いまできることを考えようということですね。将来の不安は誰にとっても当たり前のことなので、いまのじぶんはただただ不安なじぶんなんだな、と俯瞰してみることができたら楽になると思いますよ。