神戸市外大

サークルの概念をハミ出した、
休学したいひとのための
休学情報プラットホーム
「キューガク。」を立ち上げる。

久々江美都 外国語学部 国際関係学科 2011年度入学/2016年度卒業

休学したくても、上とのつながりがないと情報がなかった。

 外大というのはある意味特殊な環境で、休学して留学するひとが全学生の8割近くいると思います。でも、休学しようと思ったときに本当に欲しいのは実際に休学したひとからの情報なんですが、そこに関しては非常に少ないというか、ぜんぜん情報がないのが実情でした。体育会に所属しているようなひとなら上とのつながりはあるのでしょうが、わたしのようにクラブに属していないとまったく情報がなく手探りのまま、世界一周旅行なのか、インターンシップなのか、はたまたっていう状態でした。わたしの場合はじぶんがやりたいことを徹底的に検討していろんな角度から判断した結果、すべてじぶんで調べてアメリカの大学の学部に留学しました。もう、片っぱしからアメリカの大学を調べた感じです。
 じつは1年生の春休みにガーナへ行っています。もともと難民問題に興味があって国際関係学科に入学した経緯があり、ずっとアフリカには行ってみたくて、ガーナでは孤児院のボランティアに参加をしました。ただ、ボランティアに期待されるのはその場だけの、一時的なお金や物の支援なのか?と感じざるを得ない経験がいくつもありました。現地でいろいろ思うことはありましたが、わたしがやりたいのは国際関係のボランティアではないと思い、2年生の春からは、より直接的かつ継続的に関わりを持つことができるよう、日本国内にいる難民申請者や仮放免者(在留資格がないため入管の施設に収容されたものの、その後一時的に釈放された外国の人たちのこと)を支援するサークル(TRY)に入って活動をすることにしました。

ガーナの孤児院でのボランティア

ともにガーナでボランティア活動をした仲間と

もしも他の選択肢もあるとわかっていたら…。

 アメリカの学部留学にまったく悔いはありませんでした。勉強漬けになってやろうと思ってかなり田舎の大学に行ったのですが、それこそ人生でいちばんといえるくらい勉強しました。
 留学期間は英語だけじゃなく、中国語、アラビア語、日本語の専攻まで授業が揃っている大学を選んでいたので、語学が身に染み込むのはもちろんのこと、日本語に興味がある学生さんたちとも多くのつながりをつくることができる環境でした。そのうえ国際関係や政治、当時の外大では専門的には学べなかった女性学や心理学などもかなり深く学ぶことができました。格安バスを乗り継いでの全米一周旅行など、やりたかったことを詰め込んだ1年間の留学そのものは大満足でしたが帰国後にその経験を語る場がなかったんです。あったとしたら、就職活動の際のエントリーシートに休学の経験を書くことくらいでした。せっかくの経験をだれにも共有できなかったり、後輩たちに繋げないのはどうなん?って、思いはありました。それに留学前に外大内の部活に入っていなかったので、先輩方からの経験談や情報がなかった分、「本当にわたしは学部留学でよかったのか?」 という思いがあったのは事実です。

アメリカ留学した際にできた親友たちと

アメリカで留学生として1人で飛び込んだ女声合唱のコンサート

休学情報交換のための「キューガク。」

 繰り返しになりますが、当時の外大では実際に休学した方からアドバイスをいただける機会は非常に少なかったので、選択肢をすべて俯瞰的に検討するというよりは、その時のじぶんの興味とか関心など目に見える範囲の選択肢をもとに休学の内容を決めるひとも多かったと思います。お話ししたようにじぶん自身の学部留学に悔いはないものの、休学が終わったあとに同級生とお互いの経験を語り合ったりすると、ほかの選択肢もあるとわかっていたらじぶんはどうしただろうと感じることも正直ありました。同級生だけでなく、先輩や後輩たちにもそのことを聞いてみると、休学して留学したひとの体験や情報を知りたかったというひとは意外に多かったのも事実です。
 そこで同じような気持ちを持っていた2人の同級生と一緒に「キューガク。」という活動をはじめました。「キューガク。」は外大生のための休学情報のプラットホームです。

「キューガク。」活動のサムネイルとして使用していたアイキャッチ画像

 具体的な活動はというと、休学経験者の報告会や相談会、説明会などの企画と運営を主にしていました。そのほか、休学中の学生の1年間をフォローして定期的に現地の生活や活動を発信してもらう機会をつくったり、「いまどんな活動を頑張っていますか?」と、しつこく聞いて回っていました。(笑)「外大生のありのままの“休学なう”」を発信していき、リアルな情報を求めていた学生にも、休学中の活動について発信したい学生にも、双方からとても感謝されたのが嬉しい思い出となっています。この「キューガク。」は後輩が引き継いでくれて、なんと!いまでも活動が続いています。

休学相談会の様子、休学についての疑問などをざっくばらんに語り合いました

休学相談会の様子、目的別に話を聞けるよう工夫していました

休学相談会の様子、世界のどこで何をするか決意表明する地図です!笑

「キューガク。」初期メンバーの皆さん

「キューガク。」と同時に、就職活動もはじまってしまった。

 「キューガク。」の立ち上げ期は、発起人の3人にとっては就職活動がはじまる時期でもありました。運営は3人だけだったにも関わらず、3人が3人ともに「キューガク。」の全体運営、就職活動、アルバイト、もちろん大学の勉強(卒論執筆とか)もしなければならないという、超ハードな状況でした。両立どころの騒ぎじゃないというか、4つが同時並行で進行していくわけですから、それは大変な期間でした。(笑)
 イベントの企画、登壇者へのお声がけ、ポスター?チラシづくり、SNSの運営まですべて3人だけでやらなきゃならないうえに、3人とも卒業旅行に向けて“超”がつくほどバイトをしておりまして。(笑)振り返ると本当にタフなメンバーだったなあと、思います。ただ、卒業前ギリギリにはじめた活動だったので、せっかく興味を持って活動に参加してくれた後輩たちと1年弱しか活動を共にできませんでした。もっと一緒にやりたかったので、それだけはとても残念でした。ですが、いまも継続的に活動してくれている優秀な後輩たちには感謝しかありません!
 「キューガク。」を立ち上げることができたのは、外大ならではのオープンでアットホームな環境があったからだし、外大には休学という実体験のチャンスがあったからだと思っています。

休学おかえりなさい会の告知、手書きボードに書いていたのが懐かしいです。

休学おかえりなさい会、和室を借りて交流会を開催したことも。

休学わず。2015説明会、ランチタイムに開催し気軽にご参加いただきました。

外大祭2015、日々のチラシの印刷費などをスモアの販売収益でまかなっていました。

「点と点を繋ぐ仕事」。それが、生きていくうえでの軸になった。

 「キューガク。」がきっかけとなり、「点と点を繋ぐ仕事がしたい」と思うようになりました。わたしは知っているけどお互いは知らないふたりがいるとして、そのふたりが繋がれば面白いシナジーが生まれるかもしれない。でも、ふたりの間にだれも入ってくれなかったら、繋がらないままですよね。だから、わたしがその知らない同士のふたりを繋げられないか、そうすれば何かが起こるかもしれないと考えるようになりました。「キョーガク。」を立ち上げた経験が、わたしの中で「点と点を繋ぐ仕事がしたい」というハッキリとしたベクトルになっていきました。そのベクトルは、これからわたしが働くうえでも、そして生きていくうえでも筋の通った軸になっています。

そして、まさかの展開へ。総合商社から美大生、そしてフリーランスへ。

 「点と点を繋ぐ仕事をしたい」というベクトルは、わたしを「キューガク。」の立ち上げ以上にハミ出した経験というか人生へ向かわせたと言えるかもしれません(笑)
 外大を卒業したわたしは語学や留学経験を活かしたくて総合商社に入社しました。商社にはこの「点と点を繋ぐ」姿勢でなんでもやってやる!という心意気で飛び込んだのに、あまりにも何もできないじぶんとのギャップに苦しむことになりました。いま思えば新卒1年目なので何もできなくて当然なのですが…。なにごとにもポジティブなわたしが、こんな気持ちを抱くなんて…と、驚くとともにかなり葛藤もありました。そこでいろんな自己啓発本を読んだり、さまざまなセミナーやイベントに顔を出して、いろんな業界の方々との交流機会を増やすことで、会社以外での自分の価値探し?できることを模索していったのです。あるイベントに参加したときに、イラスト交じりのわたしの講義メモを見た主催者に、「すごい!これはキミの才能だ。仕事にして食べていけるよ」と言われたんですよ。そのときにはじめて「グラフィックレコーディング(打ち合わせや講演の内容を文字だけじゃなくイラストや図=グラフィックを使って記録する手法のこと。以下グラレコ)」という言葉を知りました。
 その後、別のイベントで知り合った武蔵野美術大学の先生にグラレコに関心があってじぶんでもやっていることを話すと武蔵美に新しくできる大学院への進学を勧められました。出願までの時間もなかったし、落ちても笑い話になる!くらいの軽い気持ちで受験したら合格しちゃって、晴れて武蔵野美術大学造形構想研究科という大学院の1期生になりました。会社の方々に迷惑をかけたくなかったし、いまのように休職制度も整っていませんでしたから、思い切って商社は辞めることを決意しました。
 なんだか本論よりこちらの話が膨らんで来ちゃいましたが(笑)、大学院を卒業したいまは、フリーランスでグラフィックレコーディングを使ってひとの悩みを可視化する方法で個人へのコンサルティングをおこなったり、他にもにコミュニティー?マネージャーや大学の企画広報、ソーシャルデザインなどの新規事業を推進する仕事をしています。とはいえ、じぶんにはがっつりコンサル的な関わり方をしたいという志向はないので、可視化をはじめとしたグラフィックレコーディングや自己表現スキルがより広がる社会の実現に少しでも貢献できればと思っています。
 じぶんでもなかなか変わった生き方をしていると思いますね。まさか、大学卒業後の10年間がこんな激動に満ちた人生になるとは想像もしていませんでした。

グラレコしている風景

いま取り組んでいることに全力投球せよ。

 最後に後輩の方にお伝えしたいのは、人生は面白いものであるということです。勢いとご縁だけで突っ走っていれば、チャンスが自然にじぶんの手元に舞い込んでくるように思います。わたしもまだまだ可能性を模索し続けます。これからの10年は外大卒業後の10年以上にドキドキワクワクするものにしていきたいなと、本気で思っていますし、常にその気持ちはアップデートしていきたいです。
 後輩の皆さん、いま取り組んでいることにぜひ、そのまままっすぐに全力投球してください。じぶんの可能性を過小評価せず、チャンスが来たら全力で掴みにいってください。きっと、新しいステージが開けると思いますよ!ささやかながら応援しています。

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