お知らせ

2024年4月 8日

2024年度宣誓式?入学式を挙行しました

4月5日、479人の新入生を迎えました。 ?新入生は、久元喜造神戸市長から祝辞をいただき、教職員をはじめ多くの方々から祝福を受け、本学学生としての大学生活をスタートさせました。

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ここに、田中学長の式辞を紹介します。

学長式辞

新入生の皆さん、澳门美高梅金殿,澳门赌场appへのご入学、おめでとうございます。また、別室にてご列席の保護者の皆様におかれましては、ご入学生に対するこれまでのご支援に、大学教職員を代表して敬意を表しますとともに、この場をお借りしてお祝い申し上げます。本日、本学には、大学院に36名、学部に443名の新入生をお迎えすることになりました。新たに479名の学生を本学にお迎えできますことを、大変喜ばしく思います。

さて、皆さんは、「ガラパゴス」という言葉を聞いたことがあると思います。今日では、ガラケー、すなわちガラパゴス携帯といったビジネス用語として用いられることが多いのですが、もともと「ガラパゴス」は進化論で有名なダーウィンが、進化論を着想するきっかけとなったユニークな生物が生息するガラパゴス諸島を指しています。ガラパゴス諸島は南米大陸から西に約1000kmの地にある赤道直下のエクアドル領の島々ですが、どの大陸からも非常に遠く離れた「絶海の孤島」ともいうべき島々ですので、天敵がおらず、そこに生息する動物たちは外敵に対する警戒感が薄いと言われています。ここの動物たちは、激烈な生存競争にさらされることがないため、おそらくは比較的快適に生活しているのでしょうが、いったん外部から外敵が入ってきたときには淘汰されてしまう――つまり絶滅してしまう――危険性が強いとされています。

同じようなことは人間社会でも見られると思います。私たちは「仲間」(それは親しい友人や学校?会社の構成員かもしれませんし、日本人全体であるかもしれませんが)と一緒にいるときには、心地よく感じるという強い心理的傾向――これには「内集団バイアス」といういかめしい名前が付いています――を持っていると言われています。海外に出られたことがある方は経験したことがあるかもしれませんが、海外では偶然出会った日本人同士が集団を形成する光景をしばしば目にしますが、これは人間のこうした心理的傾向をよく示しています。もちろん、「仲間」の中で交流を進め、帰属意識を高めながら様々な活動を行うことは有益なことです。実際、携帯電話の普及初期において、日本人は、多くの日本人同士の協力や努力を通じて、当時の世界最先端の独自技術を数多く携帯電話に実装し、世界最高水準の性能や機能を持つ携帯電話を作り出しました。

しかし、「仲間」の中だけで行動することは、一方において、大きな危険性をはらんでいます。「仲間」内の状況だけをみて物事を判断しようとすると、外部の状況の変化を正確に捉えることができず、世の中の趨勢から取り残され淘汰されてしまうかもしれません。普及初期の日本の携帯電話は、機能こそ世界最高水準であったのですが、海外市場の趨勢をうまく取り込まなかった結果として、海外市場ではほとんど売れず淘汰されてしまいました。先ほど言及したビジネス用語としての「ガラパゴス」は、そうした状況に警鐘を鳴らす表現として用いられています。

皆さんには、是非、「仲間」の中での交流だけでなく、いわば「仲間」の外に飛び出した交流をも進めていただきたいと思います。「仲間」の外に飛び出した交流は、たとえば文化的背景の異なる海外の人々との交流や他大学の学生?年齢層の異なる人々との交流かもしれませんし、自分の専門分野と異なる専門を持つ人々との交流であるかもしれません。確かに、自分を「仲間」の外に置くことは様々な困難を伴うでしょう。そこでは、仲間内では通用する事柄が必ずしも通用しませんのでしんどいことが多く、意識的な努力が必要となります。しかし、こうした努力を通じて、仲間内にはない良い点を発見したり、仲間内の悪い点を見いだすことができるのだと思います。そうした努力が「ガラパゴス」に陥り淘汰されることを避ける上で極めて重要であることを肝に銘じていただきたいと思います。

ときには、苦手意識が「仲間」の外に飛び出す努力の障害になることがあるかもしれません。多くの皆さんは、高等学校で自身の進路志望に応じて理系?文系に分かれて勉強をしてきたことと思います。また、受験勉強では主に受験科目に焦点を当てた勉強を行ってきたことと想像します。この結果、皆さんの中にはともすれば理系分野に苦手意識を持っておられる方がおられるかもしれません。しかし、現在では理系分野と人文?社会科学分野が共同しながら、問題解決を図ろうとする事例が増加しています。AIの仕組みはプログラムに集約されますから、情報科学という理系的なものから成り立っていますが、その利用をめぐって生じる多くの課題(たとえば、著作権の問題や倫理の問題)はすぐれて人文?社会科学的なものです。人文?社会科学という、いわば「仲間」の外に飛び出すためには、食わず嫌いを克服し、苦手意識を持つかもしれない理系分野の勉強にもチャレンジする必要があるでしょう。

ご存じの方も多いかと思いますが、昨年度より本学はお隣の神戸市立工業高等専門学校と共に、神戸市公立大学法人という同じ法人の下で運営されております。本日の入学式には、法人の理事長や、兄弟?姉妹校である神戸高専の校長も出席しております。昨年度から、違う専門分野を持つ両校の学生の交流活動もスタートしています。「仲間」の外に飛び出す機会として、神戸高専の学生との交流を行って、文理を横断する広い視野を養うことにチャレンジしても良いかもしれません。

大学?大学院時代は、あっという間に過ぎてしまいます。皆さんが、この貴重な大学?大学院時代の期間で、関心を持つ領域の専門性を高めるとともに、意識的に「仲間」の外に飛び出す努力を行い、社会が直面する課題を解決できるような能力を身につけ、大きな成果を上げられることを心よりお祈りして、私の式辞とさせていただきます。

ご静聴、ありがとうございました。

2024年4月5日
学長  田中 悟